「やりがい搾取」「無賃労働」
これらの用語は日本の大学生インターンシップにおいて最近よく聞かれるようになったワードです。
本日は実際にベンチャー企業のインターンで無給労働をさせられ、会社に未払い賃金請求をした経験を持つ大学生に記事を寄稿していただきました。
学生だから。スキルを身につけられるから給料は低くていいというのは明らかにおかしいのです。
特に、無給インターンで社員と同等の労働をするのは明らかにバカです。無給インターンで労働をしていたというのは労働基準法を遵守できない会社で働いていたということであり、むしろ恥です。何の自慢にもなりません。
「やりがい」だの「スキルが身につく」だの勝手な論理を押し付けて学生に無給インターンをさせる企業は完全に違法です。本記事をお読みになって、是非とも自分自身の労働リテラシーを高め、自分の労働力を企業に安く売り渡すようなことがないようにしていただければと思います。
ということで以下、インターンで無給労働をさせられ、会社に対して未払い賃金請求を行った実体験談になります。是非お読みください。
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目次
自己紹介
初めまして。私は大学院修士1年生でプログラミングを少しかじった工学系エンジニアです。農業機械関連の自律走行について研究しております。
本日は学部4年生の時に経験したベンチャー企業でのインターンについてお話ししようと思います。
私のインターン先はイケイケベンチャーという感じで血の気が多い人が集まっていた印象でして、社長が大きな夢を語っている、そんな会社でした。私は自分のスキルも高められると思ったのでインターン先としてこの企業を選ぶことに決定しました。
しかし、今思えばこれが悪夢の始まりだったのです…
最終的にはタダ働きで長時間労働をさせられ、未払い賃金を会社に請求するほどまでのトラブルが発生してしまいました。
これからインターンを探す学生の皆さんは、「やりがい」などという言葉に惑わされて私のような目に合わないようにしてくださいね。
今思えば友人の紹介だからといって安心しきっており、きちんとその会社のことを調べきれていなかったのが失敗でした…
というわけで以下、時系列で私がインターンで受けたやりがい搾取の実態、偽装請負の経験についてお話ししたいと思います。
インターンを始めたきっかけ
冒頭でもちょこっとお話ししましたが、大学4年生の春先に有給インターンとして友人に誘われたのがきっかけです。
オフィスを訪問した際は、「個人事業者みたいなものだから」と一言言われ、業務委託契約を結びました。ここで業務委託契約を結んだということがあとあとの問題につながっていくこととなります。
この時点では労働時間は申告制であり、時給1500円で割りのいいバイト程度としか思っていませんでした。労働時間が申告制なんておかしいと思っていたのですが、「まあそんなものか」と思ってロクに調べることすらしていませんでした。今思えば、疑問に思ったことはきちんとその場で調べて解決しておくべきでした。
仕事内容としては初めの頃はプログラミングなど本格的な開発はまだ始まっていませんでしたが、英語サイトの調べものなどこまごまとした頼まれごとの仕事をこなしておりました。
夏頃から開発環境の構築など徐々に本格的な仕事を請け負うようになっていき、開発に担当分野が決まることとなりました。
この頃はまだ良かったのですが、経営が厳しくなったという旨を開発責任者から秋頃に聞かされます。
無給労働を強要される
経営が厳しくなったという旨を聞かされたのも束の間、間髪をいれず、
「時給1500円はだせない。これからは固定給制で月30000円にする」
と伝えられます。
開発責任者の言い分によると、「自分たちのやっていることはその分社会に与えるインパクトが大きい。お金は出せないが、そういうことを考えてくれ」とのことでした。
社会に与えるインパクトの大きさと給料にはなんの相関性もないですし、会社の言い分は支離滅裂でしたのでさすがにこの時点でインターンを辞めることを考えていましたが、「この額では生活できない」との旨を伝えたところ、月額約50000円にしてもらいました。
とはいえ、このころには段々仕事内容のレベルが高くなっており、割に合わないと感じ始めておりました。
そして11月頃、給料が変更されました。4年生だったため卒業研究も忙しくなりつつも、会社の作業をこなしておりました。なるべく稼働時間が長くならないようにしていましたが、おそらく時給換算すると1000~1200円ぐらいだったでしょう。
11月末の休日にオフィスの引っ越しがありました。自分も手伝ったのですが、社員が「給料出せよ」とぼやいているのを聞いて、「休日に引っ越しを手伝わせて給料を出さないのか…」と思い、軽く引きました。
年が明けて1月半ばになりました、
社員が金庫のお金の不足分10万円を横領したことにされ急に辞めさせられたという話を聞きます。この辺りで辞めることを考え始め、年明けの2月に「しばらく会社から離れたい」という意思表示を示しました。
しかし、「それは困る」と引き止められ、会社と口論になりました。
会社との口論で疲れ果てた私は「しばらく会社から離れたい」という旨を伝えました。
これで一件落着…と思いきや再び連絡があり、会社に戻るとは一言も言っていないにも関わらず「いつ戻ってくるんだ?」と言われ、またしても無理やり説得されました。
仕方なく4月に復帰するということを伝えましたが、いざ4月になってみると、「今は会社に案件がないから復帰ができない」と言われてしまいました。
それを聞いた後、「会社都合で働けなくなるのは損害賠償が発生するのでは?」と思うに至りました。
さらに口座を確認したところ、出勤したのに2月分の給料が振り込まれていないことに気づきます。
これは損害賠償と未払い賃金の請求ができるのではないかと思い、労働関連のNPO POSSEに相談をしました。契約書を持って会社の業務内容、契約内容などを話したところ、会社の契約自体が法律違反だったということが発覚しました。
お金のことだけならまだしも契約まで違法ならさすがに我慢がなりません!
そこで私は未払い賃金請求をすることしました。それでも向こうが賃金を支払ってこなければ、労基署への告発も辞さない考えでした。
未払い賃金請求
以上の経緯から、2月分の給料が支払われていない旨をNPOに相談しに行きました。
契約書を元に様々な質問を受けたのですが、業務委託契約が違法かどうかという指標でチェックをするとのことでした。これらに1つでも引っかかってしまうと業務委託契約ではなく雇用契約に当てはまる可能性があり。違法となるとのこと。
チェックしてもらった結果、私の契約形態は雇用契約に当てはまっていたため、違法であったということが発覚しました。
ということで、2月の給料と損害賠償を会社に請求することになりました。
さて、未払い賃金請求にあたって、恐らく会社は賃金を支払ってこないでしょう。ですので会社が未払い賃金を払ってこない場合に備えて下準備をすることになりました。
まず、問題のある会社は従業員に業務があったという事実を隠蔽しようとします。従って、業務があったという証拠が必要になります。
そこで私は作業場に行った証拠としてSuicaの履歴を使うことにしました。(タイムカードがあればよかったのですが、固定給制になってからつけなくてよいと言われており、つけておりませんでした。)
履歴印字で交通履歴を出そうとすると100件までしか出せず、その前の履歴が出なかったのですが、JRに問い合わせたところ個人情報センターに申し込めば1年前までの履歴を出せるとのこと。
まず電話で問い合わせ、必要書類を送付してもらいました。送られてきた必要書類を書いて身分証明書を送ったら、数日後履歴が送られてきました。履歴があれば実際に勤務した証拠になることでしょう。
そこでもう一度NPOに行き、未払い賃金請求書のひな型をもらい記入して内容証明で送付。
もしそれでも会社が賃金を支払わなければ履歴印字を持って即座に労基署に行くつもりだったのですが、数日後には未払い賃金が全て支払われました。
こちらの予想ではもう少し粘ってくると思っていたため、結果的にSuicaの履歴表示は無駄になってしまいましたが、まあお金が返ってきたので結果オーライかと思います。
これからインターンを経験するみなさんへ伝えたいこと
さて、以上が私のインターン経験だったのですが、ここから学ぶべく教訓、そしてみなさんに伝えたいことは2点あります。以下それを記載いたしますので、このインターンおかしいな…と思ったら今すぐにNPOなどに相談するようにしてください。
突然の給与変更はありえないと思うべき
突然給料を下げるなんてことになったらまずその会社を疑いましょう。
会社の経営が厳しくなったのは理解できますが、こちらの同意もなく詳しい事情も話さず給料を下げるのを押し付けるのはどうかと思います。
今回のケースで言えば(もし開発に成功したら)社会的にインパクトがあるとはいえ、それと給料の問題は何の関連性もないです。仕事をしたらそれに見合った給料を支払うというのが企業の在り方であり、レベルの高い業務をさせているのにもかかわらず明らかに低い給料だったなら明らかに搾取です。
「やりがい搾取」という用語もありますが、やりがいがあるからなどという理由を盾に給料が下げられるなんてことはあってはいけません。
雇用契約と業務委託契約の違いを理解しておくべき
今考え直してみると本当に危険なところにいました(笑)。
業務委託契約は会社と会社の仕事に対する報酬のやり取りです。従って、業務委託契約の報酬が時給制、固定給制であるならば労働者性があるとみなされそれは雇用契約とみなされます。
また進捗報告の義務や細かい業務の指示があるとこれも雇用とみなされ契約は違法です。すなわち、私の場合は本来は雇用契約のはずが、向こうの都合で業務委託契約にされていたのです。
「偽装請負」とかで調べてみるといろいろ書いてありますのでご興味のある方はどうぞ。
ちなみに私の場合でいけば業務内容的に大怪我をする可能性もありました。大怪我の可能性もあるにもかかわらず、自分の契約は業務委託だったので労災にも入っておらず怪我をしていたら自己責任でした。今思えば大変危険な契約だったと思います…
また、インターン生の一人は確か無給ということになっており、なぜ給料が払われないのか意味不明でした。無給でインターンをさせていいのは職場体験や見学などの範囲であり、企業の利益になる業務に無給で従事させると最低賃金法違反となり違法です。
これからインターンを考えている就活生へメッセージ
最後に私から、これからインターンを考えている就活生へメッセージです。
確かにインターンは自分のスキルを育てられるいい機会になると思います。エンジニアなど手に職をつけるタイプの業種を目指しているなら確かにいい経験になるのでバンバンチャレンジしてほしいと思います。
しかしスキルを身に着けられるから給料は低くていいというのは明らかにおかしいです。給料が高い仕事でも能力は身につきます。特に無給でインターンするのは明らかにバカです。無給でインターンをしていたといえば、労働基準法を遵守できない会社で働いていたということであり、むしろ恥です。何の自慢にもなりません。
労働者は会社の経営者に対して弱い立場にあります。労働基準法で自分たちの権利を守っていかないといけないのですが、学生だとまだ法律をよくわかっておらずどうしたらいいのかわからず泣き寝入りすることが多いのではないかと思います。特にバイトでは弁護士に相談するとお金がかかりすぎるので、困ったときはNPOに相談するのがいいのではないかと思います。
そして、もしブラック企業が損害を与えてきたのなら、しっかりと戦いましょう。
NPOの方によると日本ではブラック企業、ブラックバイトが蔓延るのは、日本人は損害を受けた時も請求をしないから、だそうです。
ヨーロッパではこのような事件が起きると社員がすぐに損害賠償請求をしてくるので、会社は法律をきちんと遵守するようです。
実際に請求をしてみるまでは賃金が支払われるかどうかはわかりませんが、とりあえず請求してみないと0です。
今回のように悪い会社に対しては請求をして、未払い賃金を勝ち取ったという事例を増やしていくことで、世の中の会社が法律を遵守していくようになればと思います。
まとめ
以上、インターンで無給労働をさせられ、会社に未払い賃金の請求をした実体験談でした。
自分の身は自分で守らねばならないということを実感する実話です。彼はきちんとNPOに相談し、未払い賃金を受け取ることができましたが、中には未払い賃金を支払ってもらえず、泣き寝入りすることになった労働者も多いことでしょう。
彼も言っていますが、インターンで困った時はまずNPOに相談するのが良いということです。
学生とはいえ企業の仕事に従事することになったら1人の労働者です。契約の仕組みを理解して、自分の身は自分で守るようにしましょう。
ではでは今日はこの辺で。
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ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
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